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2007年1月15日 (月)

風が強く吹いている

 箱根駅伝の常連校である拓大は、一昨年、予選会で実タイムでは9位だったが、インカレポイントで逆転され10位で涙を呑んだ。
 選手は一年間、前回の悔しさを胸に練習に励んだ。「何としてでも箱根に戻るのだ」と。そして、昨年の予選会。彼等は良く走った、目の肥えた観客も「今年の拓大はいいネェ」と呟いた。
 10人が20kを走って合計タイムは6位とは33秒差の7位。10位とは3分39秒の差があった。7位以下はインカレポイントの対象で、微妙な順位だ。選手達は大丈夫だという自信と、もしかしてという不安が交錯し、胸がギリギリ締め付けられるような時間をすごし順位発表を待った。

7位、城西大学。

8位、大東文化大学。

・・・そして、9位!国士舘大学!!

 爆発的な歓喜が沸騰するかたわらで、一瞬の沈黙が流れ、胸から絞り出された嗚咽がすすり泣きに変わった。そして腕も折れよとばかりに地面を叩きつける号泣の嵐が拓大の陣地を吹き荒れた。
 10位拓殖大学は、1秒差で箱根への道を閉ざされた。10人が20k走った合計タイムでのわずか「1秒」である。「あのコーナーで少し膨らんだばかりに」「あの給水で他の走者と交錯したばかりに」選手の胸に去来した思いはどんなものであっただろう。

 彼等がこの本を読んだら、どんな感想を持つのだろう・・・?八つ裂きにして、焼却炉に叩き込んだとしても不思議じゃない。あるいは「おとぎ話」として屈託なく楽しめるのだろうか?

 このおとぎ話は、アパート代を麻雀ですって大学で野宿したり、コンビニでパンを万引きしたりしている男が、ジグソーパズルの最後の1ピースのように竹青荘の10人目の住人になるところから始まる。(しかも高校時代には監督を殴って陸上部を辞めているというのだから相当な無頼だ)

 竹青荘の十人の住人(このシャレは本でも出てくる(^^;;)が、箱根駅伝をめざすのだ。陸上経験者は3人だけ。(ひとりは膝に故障を抱えているし、ひとりは6年前!に競技をやめたヘビースモーカー!だ)そのほかは、サッカーや剣道の経験者もいるが、中には漫画オタクで運動経験の全くない奴もいる。共通点は、みんな底なしに酒が強いことだ(これ重要)そんな十人が箱根?「絶対無理だ!」と、登場人物たちも口々に叫ぶ。(私もそう思う(^^;;)

 しかし、たった半年の練習で彼等は予選会を突破する。(ここまでのネタバレは許してね。装丁を見れば分かっちゃうもん。で、その装丁が浮世絵風でなかなか。)そして、箱根で・・。

 箱根駅伝のレースの描写は、全体の1/3にも及ぶ。それまでのユーモラスな話の展開(タイトルが“風が強く吹いている”ではないが、4頁に1回ぐらいはぷっと吹き出してしまう)と違い、哲学的ともいえる内省的な文章になる。長距離ランナーが何を考えて走っているのか考えさせられる。

 おとぎ話ではあるが、作者の徹底した取材によって流れる物語はリアリティを帯び無理なく読める。さらに、箱根駅伝のルールなど懇切丁寧に教えてくれるので(素人集団を箱根に挑戦させるのだから)読者はこの本を読了するとひとかどの箱根通になる仕掛けだ。

 そして、作者の取材の成果はこんな文章にも現れている。

「四車線になり、視界が広がったせいでスピード感がちがってくる。走っても走っても、なかなかまえに進めていないような気がする。」(467頁)(←500頁を超える大作です)

 これ、実際に走った人でないと出てこない表現だと思う。きっと作者は何人もの箱根ランナーの話を聞いただろう。最後の謝辞に取材に協力してくれたチームや監督の名前が列記されている。

 あと、大学名のもじりも面白い。中央大は真中大に、順天堂は動地堂に、六道大ってどこ?と思ったが、きっと駒沢だね。

 こうめさんまこてぃんさんとっちゃんさんもお勧めの本です。読んで損はしません。(絶賛してる?)

 あまり走りの速くない次女だが、読むのは速い。昼過ぎから読み始めて、午前1時に読了したそうです。(^^;;・・・長女はこれから。

 今日の除雪、9000歩≒4.5k。あんはゴンと5k+5k。

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コメント

ふれっぷさんも、もう読んでしまったのですね。さすが親子だ、速い!
レースの部分は、選手のスピードくらいで読ませてしまう本ですね。

投稿: こうめ | 2007年1月16日 (火) 08時12分

こうめさん、まいど。
私は、4.5min/kmぐらいでした。
箱根ランナーの1.5倍はかかっています。(^^;;

投稿: ふれっぷ | 2007年1月16日 (火) 09時15分

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受信: 2007年2月 2日 (金) 23時22分

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